変更諮問委員会 (CAB) とは

変更諮問委員会(CAB:Change Advisory Board) とは、ビジネスへの影響やリソース、技術的観点などから、変更要求の妥当性を評価し、変更の実施について協議する機関です。

CABのメンバー選考に決まったルールはなく、変更内容に応じて、その妥当性を判断するのに必要な知識や情報を持つメンバーが選ばれます。(開発担当者、運用担当者、ユーザー、関係会社など)

全ての変更要求をCABにかけることはなく、通常は重大な変更のみがCABにかけられます。実際にメンバーを招集し会議を開催する場合もあれば、メンバーにメールで変更内容の承認・非承認を尋ねるだけの場合もあります。

ITILにおける変更管理と変更諮問委員会 (CAB)

CABは、ITIL4 の変更管理プラクティスにおいて設置が推奨されています。

変更管理のプロセスは「変更リクエスト」「変更の評価と計画」「変更の承認」「変更の実施とレビュー」4つの段階に分かれており、CABは「変更の承認」段階で重要な役割を果たします。

 

変更リクエスト

RFC(Request For Change:変更要求書)を起票し、変更管理チームに送信します。

RFCには、以下のような項目を記載します。

変更の評価と計画

変更管理チームは、RFCをもとに変更の評価と計画を行います。

変更の「優先度」「スケジュール」「インパクト(影響範囲・影響期間など)及びリソース評価(担当部門・ベンダーなど)」「不具合が発生した際の巻き戻し方法」などを検討し、具体的な変更計画を立てます。

変更の承認

変更管理チームは、管理者やCABに対し、立案した変更計画の承認を依頼します。

承認のプロセスは、企業の方針や変更がビジネスに与える影響の大きさによって異なります。

たとえば、ERPソリューションの交換など、大規模な変更には、管理者だけでなくCABからの承認も必要です。一方、パッチ展開などの標準的な変更では、CABの承認は必要ありません。

その他、CABメンバーが承認した場合にのみ変更要求が承認されるケースや、CABの役割をアドバイザーにとどめ、最終的な決定権は変更管理チームの管理者が保有するケースなどがあり、CABの変更要求への影響力は組織ごとに異なります。

いずれの承認プロセスを採用していても、管理者あるいはCABに否決された場合、RFCは「変更の評価と計画」のステップに戻され再検討された後、再度承認プロセスを通されます。

変更の実施とレビュー

管理者やCABにより承認された変更リクエストに対し、リリース管理チームが変更を実装します。

変更が実装された後、変更管理チームは、レビューを行います。レビューでは、CABに承認された通りに変更が行われているかを確認します。

変更諮問委員会 (CAB) のメンバー

CABは、変更要求の妥当性を判断するために、内容に応じた専門知識を持つメンバーが招集されます。(例えばルーターの変更にあたってネットワークエンジニアが呼ばれる、など)

サービスデスクアナリスト / サービスデスクマネージャー

サービスデスクアナリストは、サービス要求やインシデントを処理し、インシデントを文書化し、サービスデスクマネージャーにエスカレーションをするスタッフです。

サービス提供に関する一般的な問題とそれらのトラブルシューティング方法に関する意見を得るために、アナリストまたはマネージャーのいずれかが招集されることがあります。

オペレーションマネージャー

組織の日常的な業務の管理責任者として、運用マネージャーが招集されることがあります。

アプリケーションマネージャー / エンジニア

アプリケーションマネージャー/エンジニアは、アプリケーションやシステムの開発・運用の責任者として、提供中の製品・サービスに関する詳細な情報を得るために招集されることがあります。

情報セキュリティ責任者

情報セキュリティ責任者は、ネットワークセキュリティの管理者として、アプリケーションやシステムに対する潜在的な脅威や脆弱性に関する情報を得るために招集されることがあります。

シニアネットワークエンジニア

シニアネットワークエンジニアは、組織のネットワークとクラウドインフラストラクチャの管理者として、CABに招集されることがあります。

変更諮問委員会 (CAB) の課題

影響範囲の特定が困難

変更要求の評価を行うためには、「インパクト(影響範囲や影響期間)及びリソースの評価」が必要です。

評価のために専門的な知識を持ったスタッフが招集されますが、個人の持つ知識には偏りがあり、影響のある範囲すべてを網羅することはできません。

変更が大規模になればなるほど、影響範囲や影響期間は拡大するため、依存関係のあるシステムやIT資産を正確に特定するのは困難になります。

そのため、CMDB(構成管理データベース)の構築が可能なサービスデスクツールなどを活用し、変更の影響範囲を的確に可視化する必要があります。

関係者が多く、連携が大変

CABでは、開発部門やサービスデスク、セキュリティ担当者、ユーザーなど、多くの関係者から情報を収集します。

各人の承認状況の確認や、変更に関する情報共有などの細かいプロセスをコントロールするのは手間がかかります。

関係者への変更内容と承認依頼の送信、会議の日程調整、承認状況、意見の集計などを効率化することはCAB運営時の課題となります。

変更諮問委員会 (CAB) の運営を効率化するサービスデスクツールFreshservice

CMDB(構成管理データベース)で変更範囲を正確に把握

Freshserviceは、変更管理や問題管理 、IT資産管理 と連携可能なCMDBを備えたITIL 準拠のITSMSです。

CMDBによって変更要求の事業への影響範囲を可視化することで、CABによる、変更の妥当性評価を容易にします。

構成管理データベース 構成管理データベース

変更諮問委員会の承認状況を管理

Freshserviceには、変更内容に応じて複数の変更諮問委員会(CAB)を登録可能です。

変更に対して承認が必要な場合、メンバーに対して変更内容をメールで送信し、承認・非承認の確認や専門家の立場からの意見を収集します。

各メンバーの承認状況やコメントは自動で集計され、管理者の最終決定の判断材料となります。

また、Office365カレンダーやGoogleカレンダーと連携可能でCAB会議の日程調整にも役立ちます。

承認依頼メール 承認依頼メール